■ 1.商品と商標の権利者
(1) 商品
小麦粉を使用した沖縄県産のそばのめん
(2) 権利者
沖縄生麺協同組合
(権利者の住所)
〒901-0152 沖縄県那覇市字小禄1831番地1
沖縄産業支援センター203-3号室
(権利者のウェブサイト)
http://www.oki-soba.jp |
■ 2.地域団体商標出願に向けての取り組み
(1) 従来におけるブランド保護の取り組み
景品表示法の規定に基づく生麺類の表示に関する公正競争規約によると、そば粉が30%以上使われていないと「そば」という表示を使用してはいけないと定められております。このため、沖縄の本土復帰から約4年後(昭和51年頃)の事ですが、設立したばかりの「沖縄生麺協同組合」に対し行政から「そば粉を原料にまったく使用していない沖縄そばは表示義務違反である」とクレームがつきました。
そのままにしておくと450〜500年前に中国から伝わり琉球王朝までに確立したといわれ、復帰以前から県民に長く親しまれてきた歴史ある食べ物である「沖縄そば」の名称が使用できなくなってしまうため、当組合では歴史ある呼称を存続しようと行政へ度重なる訴えと説明に足繁く通い、3年間この活動を続けました。
その結果、昭和53年10月17日にようやく公正取引委員会から名産・特産・本場の表示で正式に認可され、「本場・沖縄そば」として登録されました。この日を記念として平成9年に「沖縄そばの日」と定め、毎年イベントを開催し認知度を高めてきました。
(2) 地域団体商標出願の動機
過去に「沖縄そば」という名称が使えなくなるかも知れないという危機を乗り越えた経験がありましたので、名称の大切さというのはある意味誰よりも理解していると思っていました。
地域団体商標制度が新設されるということで、今度は「沖縄そば」という名称を商標権として取得できることになるとのことで、県民に愛される食の代表として付加価値を高め、今後有効に活用するために、また保護するためにも地域団体商標を取得する事に異存はなく、すぐに出願の取り組みにかかりました。
(3) 地域団体商標出願の準備
特許庁や沖縄県の主催する地域団体商標制度の説明会や講習会等に積極的に参加し、また当組合独自でも意識向上も兼ねて専門家を招き、勉強会を開催しました。
出願に必要な情報収集等は弁理士の指導のもと行いました。
(4) 地域団体商標出願に際し苦労した事項及び注意した事項
当初は代理人を使わずに自分たちで出願することも考えていました。しかし、その年は「全国製麺協同組合連合会の全国大会」が沖縄で開催される事もあり、その準備等で忙しいので弁理士に依頼しました。
審査の段階で周知性を証明する資料の追加を求められました。組合には、これまで県内外で行ってきた様々な活動の資料がありましたので、それらを揃えて提出しました。
周知証明には、沖縄県内のチラシや新聞掲載記事をはじめ県内外で実施・参加したイベントの広告や県外で掲載された記事、また沖縄県の小学校の道徳の教科書など、組合に関する記録や「沖縄そば」の記述のある様々な文書類を提出しました。 |
■ 3.地域団体商標の登録後のブランド管理及びブランド展開
(1) ブランドの管理及び商品・役務の品質管理(管理手法・体制等)
「沖縄そば」は十数年前に沖縄ブームによって、すでに県外の大手の企業が商品として全国的に販売されている事や昨今、県内では「沖縄そば」の定義からはずれた商品が出回るなど観光客や消費者に悪いイメージを与えかねない為、今後「沖縄そば」の定義を周知徹底させていきたいと思います。
ブランドの品質向上に向けての取り組みは、「沖縄そば」に適した小麦粉を県内の製粉メーカーにこれまで数回ほど、改良を重ねながら当組合員だけが使用できる専用粉を協同購入しております。今後とも品質向上に向けてメーカー側と連携しながら更にブランドとしてのグレードを高めていきたいと思います。
また、「沖縄そば」の独特の特徴である歯ごたえは「カンスイ」が決め手になる為、これを沖縄県工業試験場において昨年から本格的に研究開発に向けて始動しており、数年後をメドに製品化にこぎつきたいと思います。
(2) ブランド展開
当組合では、地域団体商標の登録を機に、地域ブランドと沖縄そばのロゴマークをリンクさせた形でPRに取り組みました。
先ず、「沖縄そば」のロゴマークを公募し全国から募り、そのロゴマークが決定した後、県庁内の記者室で県内のマスコミ全社が取材に集まる中、当組合の「沖縄そば」が地域団体商標を取得した事と「沖縄そば」ロゴマークを決定した事を発表しました。これには大きな反響がありました。
それと同時にメディアの力を借りて、「ロゴマーク集めようキャンペーン」を実施し、量販店では商品のパッケージにロゴシールを貼り、また、業務店に於いては食後に応募シールが貰える等の消費者に印象づけるPRを2ヶ月間実施した結果、非組合員との差別化にも繋がりました。
また、当組合員の業務店では、当組合発行の「地域ブランド認定登録証」と記載した沖縄そばロゴマーク入りのステッカーを入口に貼るなどして、ブランドの周知性の確保に取り組んでおります。
このように特性ある「沖縄そば」が地域色豊かなブランドであることをアピールするとともに、当組合のロゴマークが安全・安心で信頼できるシンボルマークとして定着できるように、これからも努力して行きたいと思っています。 |
■ 4.権利取得後の効果
(1) 意識変化、権利行使、売上げの変化等
組合の中には地域ブランドを活用してこれまで以上に県外出荷を増強していく動きもあり、又、組合として県外出荷に販路拡大に繋がるようなアイディアを模索中であります。
県内ではキャンペーン期間中にアウトサイダーから費用を負担してでもキャンペーンに参加したいとの申し出があった事と、県外からは「沖縄そば」を製造してその名称を使って業務店でメニューに使用したいとの相談や、先程と同じように県外で製造して量販店などで販売したいとの依頼も含めて、数件の問い合わせがありました。
権利取得後の組合員の売上げの変化については、キャンペーン期間中は多少良かったとは思いますが、その後は効果が現れたという情報が届いていないのが現状です。 |
■ 5.今後地域団体商標出願する者に対してのアドバイス
ブランドの保護・維持のためには、そこに関わる人たちが積極的に考え、行動しなければならないと思います。
業界の一人一人がしっかり普及、啓発に努めていくことでブランドという財産を手に入れる事ができ、さらに磨き輝かせることが可能になると思います。
商品の名前を守ることは自らの事業を守ることであり、県民の財産を守ることに繋がることを認識して行くことだと思います。 |